RSウイルスの正式な名前はrespiratory syncytialウイルスと言い、呼吸器感染症をおこすウイルスで、毎年秋から冬にかけて流行します。2月頃からインフルエンザが流行してくるとRSウイルスは減ってきます。ありふれた「かぜ」の原因ウイルスで、2歳までにほとんどの人が感染しています。
このRSウイルスは年齢によって症状が違ってくるのが特徴的です。成人や学童では鼻かぜ程度で回復しますが、2歳以下の乳幼児では細気管支炎になることがあります。
細気管支とは空気の通る気道の一番奥の細い部分です。ここに炎症が起きて、呼吸が苦しくなるのが細気管支炎で、乳幼児に特有の病気です。
感染して4~6日後に、咳、鼻水、発熱などの上気道炎の症状で発症します。細気管支の方へ感染が進むと、胸がゴロゴロ、ゼイゼイと鳴り始めて呼吸が苦しそうになってきます。鼻水もゼリーのように粘っこくなり、こもったような咳込みが激しくなります。母乳やミルクが十分に飲めなくなることもあります。特に3か月未満児では、無呼吸発作をおこしたり、急に悪化することがあるので、病初期はあまり苦しそうではなくても原則入院して経過をみるようにします。
症状と流行状況から診断は難しくありませんが、鼻腔からのウイルス抗原検査で確定診断ができます。
RSウイルスに効く薬はないので対症療法を行い回復するのを待ちます。呼吸困難、脱水症があれば入院して、酸素投与、吸引・吸入、輸液などを行います。
RSウイルス感染によって重症化する可能性の高いハイリスク早産児、先天性心疾患などの赤ちゃんには、流行シーズン中に、1か月毎にRSウイルスに対する抗体(免疫グロブリン)の注射をして感染を予防しています。
また、喘息の子どもさんの中で、乳幼児期にRSウイルスの細気管支炎にかかったことが指摘されています。回復後もかぜをひいた時には喘息がおこるかどうか、少し注意をしておいてください。
乳幼児のいるご家庭では、家族はできるだけ帰宅時には手洗い、うがいをしましょう。部屋は暖房で乾燥しすぎないように、加湿器を使用するといいと思います。