かわかみ整形外科・小児科クリニック |小児科サイト

整形外科サイトはコチラ

小児科医の豆知識

  • カレンダー・診療時間
  • アクセス
  • 採用情報
  • 病気のお話
  • 育児のお話
腎臓・尿路系の病気
急性糸球体腎炎
2017/11/21

 急性糸球体腎炎とは、急に血尿や蛋白尿が出現し、尿量が減ってきて浮腫が出てくるのが特徴的な病気です。高血圧をきたすこともあります。

 ほとんどは溶連菌の感染が原因なので、ここでは溶連菌感染後急性糸球体腎炎について説明します。溶連菌による咽頭炎、扁桃炎や皮膚の感染(膿痂疹など)にかかった2~4週間後に、合併症として急性糸球体腎炎は起こってきます。好発年齢は4~10歳で、3歳以下ではほとんど起こりません。

 突然、血尿(コーラのような黒っぽい尿から肉眼では正常の色まで様々です)や蛋白尿(排尿後の尿が泡立っています)が出現し、尿の回数が少なくなってきます。上まぶたが腫れぼったくなり、下肢にもむくみが出てきます。水分が貯まるので体重が増えてきます。むくみが強い時は、腹水や胸水が貯留することがあります。高血圧になるので、頭痛や嘔吐が出ることもあります。まれにけいれんを起こすこともあります。

 溶連菌感染により、体内で産生された抗体と菌体成分が結合して、免疫複合体ができます。この複合体が血流にのって腎臓の糸球体に運ばれて、糸球体に炎症が引き起こされるといわれています。

 発症すると約1か月の入院が必要です。急性期には、水分、塩分、たんぱく質を制限した食事療法を行い、安静を保ちます。尿量を増やすために利尿剤を、高血圧があれば降圧剤を使用します。約1週間後には、尿がたくさん出るようになってきますので、食事の制限を緩和していきます。溶連菌の感染が持続していれば抗生剤の内服も行います。

 予後は良好でほとんどは治癒していきますが、ごくまれに腎不全、高血圧脳症、心不全をきたすこともあります。血尿は半年間くらい持続するので、退院後も1年間くらいは外来通院で経過を観察していきます。

 近年は、溶連菌の迅速検査の普及により、溶連菌感染症と診断されるケースが多くなりました。その結果、十分な期間の抗生剤の投与がなされるため、この病気は減ってきました。ひと昔前はありふれた病気でしたが、今ではめずらしい病気になっています。

 溶連菌感染症と診断され、抗生剤をきちんと内服されたお子さんの中で、急性糸球体腎炎を発症したお子さんをまだ診たことがありません。

 逆に、急性糸球体腎炎を発症して来院されたお子さんでは、ほとんどの場合、溶連菌に感染したかどうかわからない方ばかりです。よくよく思い出してもらうと、「そういえば、3週間前にのどが痛いと言って、2日間くらい熱がでました。でも、すぐに回復したので病院には行きませんでした」ということがあります。多分この時に溶連菌に感染していたと推測されます。

 いくら治癒するとはいえ、1か月の入院と1年間の通院は大変な負担です。まれに重症な経過の場合もあります。急性糸球体腎炎を発症する前の溶連菌感染をしっかりと診断したいものです。「のどが痛くて、熱がでる」場合は、かかりつけの小児科を受診することがとても大切になってきます。

関連記事