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腸管出血性大腸菌(O157)感染症
2017/10/01

 腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成する多くの細菌の中のひとつに大腸菌がありますが、この腸内フローラの中の常在菌としての大腸菌には病原性はありません。大腸菌にも様々な種類があり、ある特定の大腸菌が下痢をひきおこし、病原性大腸菌といわれています。この病原性大腸菌の中で、腸管出血性大腸菌と呼ばれる菌はベロ毒素を産生して重症な病気になることがあります。腸管出血性大腸菌には多くの血清型がありますが、O157の頻度が最も高くなっています。

 1996年に腸管出血性大腸菌(O157)感染症が小学校で集団発生し、9000人を超える感染者が出て、3名の小学生が亡くなったことは、衝撃的で世間の注目を集めました。

 腸管出血性大腸菌(O157)は牛の腸管に生息しています。感染源は牛肉やその加工品、汚染された料理器具などです。

 感染して3~5日後に、発熱、腹痛、下痢、嘔吐が出現します。頻回の水様性下痢や血便を認めます。感染しても無症状あるいは軽い下痢で治癒する場合もあります。

 腸管内でベロ毒素を出して、腎臓や脳の血管内皮細胞を障害し、重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群hemolytic uremic syndrome(HUS)や脳症を起こします。HUSとは溶血性貧血、血小板減少症、急性腎不全の3つを特徴とし、O157に感染した人の5~10%に合併します。症状は血尿・蛋白尿を認め、浮腫、出血斑が出現し、頭痛、けいれんをきたすこともあります。特に乳幼児や高齢者に多くみられます。HUSや脳症を起こした場合には3~4%は亡くなることもあります。

 便を培養して菌を検出することで確定診断をします。1999年より感染症法の3類感染症に分類されましたので、医療機関はO157が出たらすぐに保健所に届け出をします。

 治療は抗生剤(ホスホマイシン)の内服を数日間行います。HUSや脳症を合併した場合は、生命の危険もあり集中的な入院治療が必要になってきます。

 予防には食肉の加熱、まな板、包丁や調理器具の洗浄、手洗いが大切です。2012年7月から食品衛生法により、牛のレバーを生食用として販売、提供することが禁止になりました。レバ刺しが好物の人には大変残念な出来事でしたが、O157の感染によって死亡するかもしれないリスクを考えると仕方ないかなと思います。

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