先天性股関節脱臼は生後3~4か月の乳児健診で「股関節の開きが悪い」ということで発見されることが多く、大腿骨の一番上の部分の骨頭が関節からはずれた状態になっています。
先天性と呼んでいますが、生まれる前から脱臼している(奇形性脱臼)場合は少なく、生後発育していく過程で脱臼になる(発育性脱臼)場合がほとんどです。従って、先天性股関節脱臼という名前はあまりふさわしくないかもしれません。
赤ちゃんの自然な姿勢は両膝と股関節を曲げてカエルのようなM字型の格好をしています。ここに、足をまっすぐに伸ばすような力が加わると、脱臼を誘発してしまいます。
股関節脱臼にならないように以下のことに気をつけて育てていきましょう。
1、おむつ
おむつは両脚がM字に曲がり、自由に脚を動かせる状態の股おむつにしましょう。紙おむつの使用がほとんどなので、問題はありませんが、サイズはゆとりを持ってください。サイズの合わない小さいものでは締め付けるようになるため、脚が自由に動かしにくくなってしまいます。現在ではほとんど使用されないと思われますが、巻おむつや三角おむつのように両脚が伸びた状態で固定しないようにしてください。また、おむつの交換時に赤ちゃんの両足をお母さんの片手で持って引き上げるようにしないで、お母さんの手のひらを赤ちゃんのお尻の下に入れて持ち上げて交換してください。
2、抱っこ
抱っこは「コアラ抱っこ」をしましょう。赤ちゃんを正面から抱くと、両膝と股関節が曲がったM字型開脚になります。ちょうどコアラが木につかまった姿勢と似ていることから、「コアラ抱っこ」と呼ばれています。抱っこをするときは、いつも赤ちゃんの両脚の間にお母さんの手を入れるように習慣づけて下さい。抱っこひもでは、「正面抱き用の抱っこひも」はM字型開脚になるので、使用は問題ありません。「ベビースリング」を横抱きに使用することは、開脚の姿勢がとれず両足を伸ばした状態になるので止めましょう。
3、向き癖
寝ているときに向き癖がある場合、反対側の脚が立て膝になり、内側に倒れた姿勢になって脱臼してくることがあります。向き癖側の頭、体をタオルやマットで持ち上げて、反対の脚が外側に倒れて開くように工夫してください。
もし、健診で開排制限があった場合は、整形外科を受診することになります。赤ちゃんが新生児期であれば、おむつの当て方や抱き方など生活の指導で経過を観察することが多いと思います。乳児期に入れば、吊りバンドの装具(リーメンビューゲル)をつけて、脱臼状態から正常な状態に戻す治療を受けることがあります。