二種混合(DT)ワクチンはジフテリアと破傷風の予防のためのワクチンです。定期接種として11~12歳で1回受けます。
乳幼児期に接種した五種混合(DPT-IPV-Hib)ワクチンにもジフテリアと破傷風は含まれておりますが、10年くらいで免疫力が低下してくるため追加の接種が必要になるのです。この追加接種で大人になるまでの免疫は維持できます。副反応としては接種部位の発赤、腫れがみられることがあります。
ジフテリアと破傷風はあまりなじみのない感染症と思われますので、どんな病気か少し説明します。
ジフテリアとはジフテリ菌の感染によっておこります。飛沫感染、接触感染をして、のどに白い膜(偽膜)が形成されます。頸部のリンパ節は大きく腫れ、進行すると呼吸困難、窒息死してしまいます。また、ジフテリアは毒素を産生して心筋炎をおこし心不全で亡くなることもあります。致命率は5~10%と高く、危険な感染症です。
先進国ではジフテリアの予防接種が行われているため、まれな病気になりました。日本では1999年に1例の報告があって以来、発生はありません。海外では1990年代に旧ソ連崩壊の混乱のため予防接種率が低下し、12万人以上の患者が発生し、4000人以上が亡くなる大流行がみられました。
一方、破傷風は破傷風菌の感染によっておこります。破傷風菌は土の中に存在しており傷口から感染します。例えば泥の中で汚れた古い釘を踏んで怪我をした場合などは感染のリスクが高いといえるでしょう。破傷風菌は毒素を産生し、神経に作用して舌のしびれ、味覚異常、開口障害が出現し、けいれんや呼吸困難をおこします。人から人へは感染しませんが、土の中にいるためどこででも感染の可能性はあります。
2011(H23)年の東日本大震災の際には10名の発症がみられました。現在も日本では年間100名の大人の感染が報告され約10%が亡くなっています。二種混合(DT)ワクチンの予防効果は大人になると低下してきます。大人でも破傷風の感染の可能性がある場合は接種した方がいいのかもしれません。
どちらも感染すると恐ろしい病気です。お子さんが小学5年生になり、11歳のお誕生日がきたら二種混合(DT)ワクチンの接種を忘れないように受けてください。