ぎょう虫は人の腸のなかで生活する寄生虫です。乳白色の長さが約1cmのちりめんじゃこのような虫です。毎年、幼稚園や小学校低学年の検診でぎょう虫の虫卵検査が行われていましたが、罹患率が低下し1%以下になったため、2016年4月からこの検診は廃止されました。
では、ぎょう虫はどうやって感染するのでしょうか?
まず、ぎょう虫の卵が口から入ることによって感染します。卵は腸管で孵化し、成虫となって盲腸に寄生します。約1か月でメスが卵を産み始めます。成虫の寿命は約2か月です。メスの成虫は産卵のため盲腸から移動して、夜間に肛門から這い出してきます。約1万個の卵と粘着性の液を肛門周囲の皮膚に産み付けます。この産み付けられた卵がまき散らされて、手指、寝具、おもちゃなどに付着して、家族や本人に経口感染してゆきます。卵は室温で2~3週間は感染力があります。
症状はおしりのかゆみです。夜間にお子さんが「おしりがかゆい」と言った場合は、肛門を見てください。白い虫がクネクネと動いているのが見つかることもあります。便の中にたくさんの虫が出ることもあります。また、夜間のかゆみのため寝不足になったり、落着きがなくなったりします。
虫卵検査で卵が見つかったり、便や肛門に白い虫がいれば診断できます。虫卵検査はセロファンテープ法といい、セロファンテープを肛門周囲に貼り付けて卵を付着させ、顕微鏡で卵の有無をみます。毎晩、産卵するとはかぎらないので、2日間続けて行います。検査は早朝に寝床で行ってください。朝、お子さんが起き上がって動いてしまうと、卵が皮膚から落ちてしまうので、検査の結果が正確に出ない可能性があります。
ぎょう虫を駆除する薬を内服することで治療します。薬は成虫に効果がありますが、卵や幼虫には効かないので約2~3週間の間隔をあけて2回飲みます。家族も感染している可能性が高いので、全員でそろって同じ日に内服しましょう。薬局でも駆虫剤は販売しています。
予防が大切です。おしりを手でかかない、排便後と食事前の手洗い、指しゃぶりや爪かみの習慣をやめる、寝具や下着の洗濯、布団干しや寝室の掃除をこまめにして下さい。また、起床時の入浴(肛門をよく洗う)と下着の取替えで、おしりについた卵がまき散らされるのを減らすことができます。
再感染が多いので、お子さんにぎょう虫が見つかったら、駆虫剤を内服するとともに、卵が再びお子さんの口に入らないように予防を心がけて下さい。