肘内障は乳幼児に特有の外傷で、肘の外側の骨(橈骨頭)が引っ張られることによって、橈骨頭を取り巻いている輪状靭帯と回外筋が橈骨頭からずれた状態(亜脱臼)になったものです。俗に「ひじ抜け」とも言われています。5歳くらいまでの子どもに発症します。輪状靭帯の付着がしっかりする6歳以降では起こさなくなります。
肘内障は、親がつないでいるお子さんの手を強く引っ張った場合によく起こります。急に「イタイ!イタイ!」と泣き出して、お子さんはそのまま腕をダランとして動かさなくなります。他のきっかけでは、大人が子どもの両手を持って空中にぶら下げたり、振り回したりした時があります。また、子どもが鉄棒にぶら下がったり、ころんだりした時にも起こります。
肘内障を起こすと肘をやや曲げて腕を下げたまま動かそうとしません。肘を動かそうとすると痛がります。反対の手で手首を支えて肘を動かさない様な仕草をしています。親は「手首を痛めたみたい」とよく勘違いしてしまいます。外からみても、肘に腫れや変形はありません。
このような状態になった時には整形外科を受診して、整復してもらいましょう。整復では、ずれた輪状靭帯と回外筋を元の位置に戻します。
まず、肘の外側の橈骨頭を大人の親指で押さえます。子どもの手のひらを上にむけた状態で、ゆっくりと肘を曲げながら、前腕を回内し手首を背屈すると整復できます。整復される時に押さえていた親指にクリッとした感触がわかります。
整復されると、お子さんは肩の上まで腕を挙げるようになってきます。それまでは痛がって腕が動かなくて、大変心配されていた親御さんですが、一瞬で劇的に治って大層びっくりされることもあります。
整復されてもすぐに動かすのをためらってしまう場合もあります。しばらく様子をみて、おもちゃなどを取るのに手を動かすかどうかを確認します。肘を曲げることができて、肩より上に腕が挙がれば大丈夫です。
繰り返し起こすことが多いので、肘内障になったお子さんでは、急に手を強く引っ張らないように注意して下さい。また、何回か発症したお子さんでは、整復の仕方を教えてもらっておくのも良いかと思います。