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細菌・寄生虫による病気
呼吸器の病気
百日咳
2026/6/08

 

 百日咳はその名のように咳が長びくのが特徴的な病気です。百日咳菌という細菌に感染して起こります。百日咳は感染症法により、2018年から全例の発生届が必要になっております。2018~2019年は全国で年間1万~1.5万人位の発生で、死亡例が0~1人でした。2020年~2023年はコロナの流行で著減。2024年秋頃からはコロナ後で人々の交流が活発になり、報告が増加しはじめました。2025年は年間8万人を超える流行になり、乳児の重症例や死亡例も増加しました。この8万人の年齢分布ですが、0~9歳が約30%、10~19歳が約50%、20歳以上が約20%を占めていました。

 2025年に流行した百日咳では、耐性菌が70~80%を占めていました。通常はマクロライド系抗菌薬が効きますが、これが全く効かないマクロライド耐性百日咳菌の出現でした。この耐性菌は2012年に中国で流行し、2018年には日本でも分離されましたが、限定的で拡がりませんでした。今回は、コロナの流行下での自粛で集団としての百日咳に対する免疫が低下した状態で、急激な海外との交流が耐性菌を国内で蔓延させたと思われます。

 百日咳菌の潜伏期は1~2週間で、罹患している人の咳やくしゃみから感染します(飛沫感染)。罹病期間は長く、以下の3つの病期が特徴的です。

①カタル期

  初めの1~2週間は鼻水、乾いた咳、涙目になり、いわゆるカゼのような症状がでます。発熱はないことが多く、咳はだんだんと強くなっていきます。本当はこの時期に診断したいのですが、なかなか困難です。家族が長引いた咳をしているなどの情報が参考になることがあります。

②痙咳期(けいがいき)

 激しい咳発作が2~6週間続きます。乳幼児では、顔を真っ赤にして十数回たて続けに咳き込んだ後に、息を吸い込むときにヒューと音がきこえます。咳が激しく顔が腫れぼったくなり、眼のまわりに点々と出血斑が見られることがあります。大人では、激しい咳のため肋骨を骨折することもあります。このような発作性の激しい咳は夜間に増悪してきます。特に、百日咳のワクチン(五種混合)を未接種の生後2か月未満の乳児では重症になりやすく、無呼吸など呼吸状態が悪くなり、集中治療室で人工呼吸器が必要となることもあります。

③回復期

 最後の2~10週間はだんだんと咳は落ち着いてきます。

 

 カタル期に治療を開始することができれば、症状は改善して治癒までの期間が短縮します。痙咳期に治療を開始した場合は、症状は続きますが、周囲への感染力は低下します。従来はマクロライド系抗菌剤が効いていましたが、2025年に流行した耐性菌は、この抗菌剤は全く効果がありませんでした。他の抗菌剤が有効ですが、添付文書で新生児には禁忌とされている薬もあり、使いづらいのが現状です。また、百日咳と診断できても、マクロライド系抗菌剤が効くのか、効かないのかは、菌を培養して感受性検査がわかるまでには日数がかかり、治療開始には間に合いませんので、現実的には難しいです。

 特に、新生児や2か月未満の乳児では、治療の開始の遅れが致命的になることがあり、早期診断、早期治療が大切です。家族や周囲の人の「長引く咳」の情報が有用なので、診察時には伝えるようにしてください。勿論、新生児、早期乳児のいるご家庭では、咳のある家族は早めに受診して、新生児、乳児に接しないように配慮してください。

 百日咳ワクチンは生後2か月から接種できる五種混合ワクチンに含まれています。生後2か月から1歳にかけて合計4回の接種です。その後、日本では定期接種での追加接種がありません。時間の経過とともに、抗体価は低下していきます。2025年の流行時には10~19歳が半数を占めていたことからも、抗体価の低下が推測されます。海外では4回の接種だけでなく、追加接種が行われています。

 日本小児科学会では、就学前の年長児に三種混合ワクチン(百日咳ワクチン含有)を、また11~12歳で定期接種になっている二種混合ワクチン(百日咳ワクチンなし)の代わりに三種混合ワクチンの接種を推奨しています。

 また、今後は、ワクチン未接種の、しかも重症化する可能性の高い新生児~生後2か月までの乳児を守るために、妊娠後期の妊婦に百日咳含有のワクチンを接種することで母体から乳児への移行抗体を増加させる「母子免疫ワクチン」の導入も期待されています。