ロタウイルスは乳幼児のウイルス性胃腸炎の原因として最も頻度が高く、5歳までにはほとんどの子どもが感染します。ワクチン接種がない頃には、日本では毎年120万人がかかり、約10人が亡くなっていました。
嘔吐物や下痢便の中のウイルスがヒトからヒトへと経口または接触感染し、口から入ったウイルスは小腸の細胞に感染して胃腸炎を引き起こします。感染力がきわめて強いので、保育園・幼稚園などで大流行しやすい病気です。冬から春にかけて流行するので「乳児冬季下痢症」と呼ばれることもあります。
感染して1~2日後に、嘔吐、発熱で発症し、続いて頻回の水様性下痢が始まります。下痢便はだんだんとクリーム色から白っぽい色になってくるのが特徴的です。ロタウイルスに有効な薬はないので、対症療法で自然に回復するのを待ちます。およそ1週間で治っていきます。
流行状況や症状から診断はつきますが、便のロタウイルス抗原検査を行うことで確定診断します。
頻回の嘔吐、下痢が持続し、水分・電解質の補給が不十分な場合は脱水症をおこし、顔色も不良になりぐったりとしてきます。特に乳児で初めてロタウイルスに感染した時は症状が重いので、入院して輸液をすることがよくあります。
まれに、けいれん、腎不全、脳症を合併することがあります。ロタウイルス脳症では難治性のけいれんを後遺症として残すこともあります。
以前、マスコミでノロウイルスの流行が話題になり、胃腸炎のウイルスの中では「ロタ」よりも「ノロ」の方の知名度が上がってしまいました。その影響でしょうか、胃腸炎で受診された際には、ノロウイルスの感染を心配されることがよくあります。検査をして「ロタ」でした・・と説明すると、「ノロ」でなくて良かったと言われることがあります。しかし、本当は反対で、ロタウイルスの感染のほうがはるかにこわいのです。ロタウイルスは病状が急変することもあり、小児科医にとっては、いやなウイルスです。
流行してきたら感染を拡げないことが大切です。嘔吐物や下痢の処理には塩素系消毒剤(ミルトン、ハイター)が有効です。初感染時に重症化するので、生後2か月になったらロタウイルスワクチンを接種して抗体を作り、感染したときに軽くすむようにしておくといいと思います。