A. 手首の掌側には、指を曲げる屈筋腱が多数あり、その直上に正中神経が走行しています。正中神経は母指、示指、中指と薬指の半分の感覚と、親指を小指に向き合わせる母指対立筋を支配しています。この神経が手首の靱帯で圧迫され、その支配領域のしびれ感を生じる疾患を手根管症候群といいます。
女性に多く発生し、原因がはっきりしないことも多いのですが、この症例のように手指を酷使する作業で屈筋腱の腱鞘炎を来して深部の腱が腫れることで正中神経が掌側に押しやられて発症する場合もあります。
炎症を散らす作用が強いステロイドという薬を屈筋腱の周囲に注射すると症状は劇的に軽快します。ただし、再発も危惧されますので、手指や手首を使う頻度をコントロールすることが大切になります。注射をしても改善されない場合は、神経に高度の障害を来している可能性がありますので、神経伝導速度を測る検査が必要になります。