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骨挫傷(膝脛骨・足脛骨、上腕骨大結節部、尺骨中枢端、橈骨末端、舟状骨など)
打撲などの外傷後にレントゲン検査で骨折が見つからないが痛みが強く、痛みと腫れが長引く場合などでは骨内に微小の骨折を来していることがあります。後になってレントゲン写真で仮骨が出現すると骨折が明らかになります。外傷早期のレントゲン検査では限界があります。
MRIでの検出・判定
MRI検査では外傷早期の骨変化が把握できますので、骨折または骨挫傷を疑ったらMRIを早期に行うことで病変が検出されることが多くあります。
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脆弱性骨折・疲労骨折
高齢者では、比較的長距離歩いてから膝が痛いとか、しゃがみ仕事を続けていて股関節が痛くなったなど、外力が少なくても発生する脆弱性骨折(前者は脛骨内顆部、後者は恥骨または大腿骨頚部)が起こります。このような場合にはレントゲン検査では骨折は検出できません。スポーツ活動を行う若年者でも、大腿骨・脛骨・中足骨・舟状骨部に痛みが出現してもレントゲン検査では早期の疲労骨折は検出できません。
MRIでの検出・判定
痛みが強いのにレントゲン検査ではわからない高齢者の脆弱性骨折もMRI検査であれば検出できます。若年者で疲労骨折を疑う場合も疲労骨折の有無を診断できます。
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靱帯断裂の診断(膝関節の外傷)
例えば膝関節で、外傷後に腫脹が強い場合や膝関節内に血腫が存在する場合、荷重しようとしても体重が支えられない場合など、レントゲン検査では明らかな骨折の有無程度の診断が限界です。ストレスレントゲンでも断裂部位や複合靱帯断裂の診断はできません。
MRIでの検出・判定
MRI検査を行うことで靱帯断裂の有無・程度、半月板断裂の合併の有無、レントゲンでは診断できなかった骨折の診断、血腫の程度などもトータルに評価できます。特に膝関節の外傷では、複合靱帯断裂の診断には必須の検査です。内側側副靱帯断裂のみの損傷では保存的治療が主として選択されますが、十字靱帯断裂や半月板断裂を伴っている場合には手術的治療が必要になります。手術適応の判定にもMRI検査は不可欠です。また、外傷では軟骨下骨をよく観察して骨折・骨挫傷の検出にも努めるべきと思っています。
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離断性骨軟骨炎(膝・肘・距骨)
成長期に起こる骨端症のうち、未熟な骨軟骨に繰り返し剪断外力が加わって軟骨下骨に血行障害を来すのが離断性骨軟骨炎(膝・肘・距骨)です。10歳代の野球をする男の子で肘の痛みと可動域制限を来す肘関節離断性骨軟骨炎が代表的です。早期にはレントゲン検査で診断することが困難です。
MRIでの検出・判定
軟骨下骨の病変である成長期の離断性骨軟骨炎は早期発見のためMRI検査を行うことが必要です。病変部の拡がりを把握したら直ちに負荷となるスポーツ活動を中止する必要があります。MRIを行うことで早期に保存的治療を開始できますし、骨組織の再生と修復の過程をMRIで経過観察できます。
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変形性膝関節症
変形性膝関節症では、膝の内側の関節軟骨が摩耗し、骨棘形成と内反変形、可動域制限を来します。荷重時の関節内側の痛みと関節液の貯留によるこわばり感、しゃがみ込み動作、歩行や階段昇降などに支障が出てきます。
MRIでの検出・判定
変形性膝関節症では、痛みが激しい場合や関節液が大量に貯留する場合にMRI検査で骨壊死が認められることが多くあります。骨壊死部の拡がりを把握できるのはMRIだけです。病巣部の自然経過と手術適応の判断に必須です。キリッとした痛みが続くときには半月板断裂を伴っていることもあります。半月板病変は理学所見で疑うことができますが、MRI画像を吟味してから関節鏡の適応を考えるべきと思います。
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股関節痛(変形性股関節症・骨頭壊死・脆弱性骨折・股関節炎・腫瘍など)
股関節痛がある場合に、変形性股関節症・骨頭壊死・脆弱性骨折・股関節炎・腫瘍などを疑います。痛みが強く、可動域制限があり、レントゲン検査では異常がない場合にはMRIによる精査が必要です。
MRIでの検出・判定
MRI検査で関節液の貯留、骨頭壊死や脆弱性骨折などの骨内病変、股関節周囲の筋群の左右差、骨盤内腫瘍の有無などが評価できます。変形性股関節症、骨頭壊死では病期の進行度の判定、脆弱性骨折では回復過程も把握できます。
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肩関節痛
肩関節における代表的な疾患に腱板断裂があります。棘上筋テストで痛みや筋力低下があり、インピンジメント徴候があれば腱板断裂を疑いますが、レントゲン検査では多くは有意な所見はなく、腱板断裂が大断裂~広範囲断裂になった場合に上腕骨頭と肩峰との間が狭小化する所見が出てきます。他にレントゲンで診断評価できるのは変形性変化と石灰沈着です。
MRIでの検出・判定
肩関節では全ての大きさの腱板断裂の診断に有用です。エコーでも診断できますが、断裂部の3次元的な把握はMRIの方が優れていると思います。断裂部位の大きさと棘上筋の筋萎縮の程度も評価できます。筋萎縮が進行していれば筋力の回復も時間がかかると予後も推測できます。炎症が強い場合には関節液の貯留も認めることができます。
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化膿性疾患・腫瘍性疾患
エコー検査やレントゲン検査では、全体像を評価することができません。レントゲンは骨病変のみの評価だけですので軟部組織の評価は不可能です。軟部組織のエコーでは再現性が疑わしいことがあります。
MRIでの検出・判定
MRI検査により化膿性膝関節炎や指の化膿性腱鞘炎の炎症の拡がりが分かりますので術前プランニングに役立ちます。また腫瘍性疾患では、良性悪性の鑑別診断、腫瘍の3次元的な局在の把握にMRIは必須です。