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くらしと育児
左利きは直す?
2017/11/21

 左利きの割合はおよそ10%といわれています。10人に1人なので、兄弟姉妹や親戚をみわたせば、たぶん誰かが左利きでしょう。女性より男性に多いようです。

 右利きと左利きではどこが違っているのでしょう。利き手が決まるのは「遺伝説」、「環境説」がいわれていますが、現在では生まれながらの特徴とする「遺伝説」が主流になっています。両親とも右利きで左利きが生まれる確率は9.5%、片方が左利きでは19.5%、両方が左利きでは26.1%といわれています。数字をみれば確かに両親が左利きなら4人に1人は左利きの子になり、左利きの子が生まれやすいといえます。しかし、両親が左利きでも子どもの4人に3人は右利きになり、左利きから生まれるのは右利きのほうが多いです。遺伝しているようですが、単純には説明できません。いったい利き手の違いは脳のどこがどう違っているのか。まだ、謎のままです。

 動物の中でみると人間だけが90%と右利きに偏っています。脳は左右に分かれています。脳と体はクロスしていて、左脳は体の右側を、右脳は体の左側を支配しています。また、人間と他の動物の最大の違いは言語能力が人間にあることです。この言語中枢はほとんどの人が左脳にあります。従って、人間では左脳が優位になり、左脳の支配する右半身の方が発達するので右利きが多いという説があります。

 では、左利きの人では右脳に言語中枢があり、左右の脳の働きが逆になっているのか。しかし、これも違うようです。言語中枢は右利きのひとの95%が左にあります。左利きのひとの70%も同じ左にあります。左利きの30%の人しか右脳に言語中枢をもっていません。このように利き手と言語中枢との関係はまだわかっていません。

 ただ、左利きの脳と右利きの脳がまったく同じではないとわかっています。左利きの人の方が脳の左右差が少ないといわれています。たとえば、脳損傷を受けた人がどんな機能を取り戻せるかには個人差がありますが、左利きの人の方では回復が早いともいわれています。これは、左利きのほうが脳の機能が分散していて、右利きの方が集中しているからと説明されています。

 世の中のものは多くが右利きに便利になっていますが、以前から左利き用のハサミなど左利き用の商品もあります。今では冷蔵庫のドアも左右どちらでも開くようになっています。これからは左利きの人が快適にできるような仕様が増えてくると思います。

 しかし、字を書くときだけは右の方が書きやすそうに見えます。横書きでは左から右に書くので、書いた文字が左手でこすれてしまいます。また、文字の多くは右の方が上がっていますが、左手では右肩上がりの字をかくのは難しいです。そのためか、字を書く時だけ右手を使う人も多いようです。

 どうして左利きになるのかわかっていない状況では「左利きは直す?」に対する明確な答えは用意できません。いずれ科学が進んで利き手が決まる仕組みがわかったときにはっきりすると思います。ただ、生まれながらに自然と決まった仕組みを無理に矯正させる必要はないと思います。かつてはさまざまな偏見から無理に変更させられ、子どもに多大なストレスを与えていたようです。現代では本人に任せておくのが一番ということでしょうか。