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小児の鼠径(そけい)ヘルニア
2017/10/04

 鼠径(そけい)ヘルニアは小児の外科的疾患の中で最も多い病気です。発生頻度は子どもの1~5%といわれ、男の子にやや多くみられます。

 「ヘルニア」とは、体の臓器や組織の一部が元々ある場所からずれて脱出した状態のことをいいます。鼠径ヘルニア、臍ヘルニア(出べそ)、椎間板ヘルニア、横隔膜ヘルニア、食道裂孔ヘルニアなど、体のいろいろな部位で起こります。

 鼠径ヘルニアでは、鼠径部(ももの付け根)に腸管や卵巣が脱出して膨らんできます。一般的には、「脱腸」と呼ばれている病気です。

 先天的な原因で起こります。胎児の時には腹膜の一部が袋状になって鼠径部に伸びてきていて、お腹の中と鼠径部はつながっています。この袋状の部分を腹膜鞘状突起といいます。普通は出生時にはこの突起は退縮して閉じていますが、ここが開いたままになっているとヘルニアになります。

 おむつを替えている時や入浴時に鼠径部が膨らんでいることで気付かれます。膨らみを触ると腸管が出ている時には、やわらかくグジュグジュとした感じがします。そっと押してみると元に戻ります。この病気は鼠径部が膨らんだり、引っこんだりするのが特徴的です。泣いたり、排便時にいきんだりと腹圧がかかる際に、よく腸管が脱出して膨らみが観察されます。受診された際に、お母さんが「大泣きするとふくれて、泣きやむといつの間にか引っこんでいます」と言われることがあります。この場合は診察時には膨らんでいなくても、鼠径ヘルニアを強く疑って、小児外科に紹介します。

 合併症として注意が必要なのは、ヘルニアの嵌頓(かんとん)です。脱出した腸管がヘルニアの袋の入り口で締め付けられて元に戻らなくなった状態です。とても不機嫌になってきます。鼠径部を見ると、硬く膨らんでいて、触ると大変痛がります。腸閉塞になるので、次第にお腹が張ってきて嘔吐もでてきます。このままの状態が続くと脱出した腸管が血行障害で腐ってしまい、命の危険性もあります。嵌頓した場合には、緊急手術が必要になるので、夜間でも迷わずにすぐに病院を受診して下さい。

 鼠径ヘルニアがあるとわかった場合には、お子さんが不機嫌で大泣きをする時は、必ずおむつをはずして鼠径部を見るように注意をして下さい。

 鼠径ヘルニアは手術で治療します。生後1年以内では自然に治癒することもありますが、嵌頓する頻度も高いです。鼠径ヘルニアは自然に治癒する可能性や、嵌頓をおこす危険性を予測することはできません。従って、待機して自然治癒するのを待つよりも、早めに手術を受けるほうがいいと思います。手術はヘルニアの袋の入り口を糸で縛って閉じて、腸管や卵巣がでてこないようにします。入院期間は1~5日間くらいです。日帰りで手術ができる病院もあります。

 鼠径部の膨らみを一回でも見つけたら、すぐに元に戻っても、必ずかかりつけの小児科、または小児外科を受診して下さい。

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