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59. B型肝炎ワクチン
2014年9月
 B型肝炎ウィルス(HBV)の感染を予防するワクチンです。日本では1985年から「B型肝炎母子感染防止事業」として世界に先駆けてワクチンの接種が開始されました。対象者はHBVに感染している妊婦から出生した子に限られていました。出産時における垂直感染を防ぐ目的でした。これによって、母子感染による子どもの感染は著減しましたが、HBV感染は母子感染以外でも多く生じており、ここ最近では、特に20〜30歳代での感染者の増加が懸念されています。
 日本でのHBV感染者は約130万人(100人に1人)と推定されています。HBVはとても感染力の強いウィルスで、母子感染以外では、父子感染やほかの家族からの水平感染、性行為での感染が多くみられます。血液や精液は強い感染源ですが、唾液、汗、涙、鼻水、尿などの体液にもウィルスが含まれ、感染させることがあります。ピアスの穴あけ、鍼灸、入れ墨、歯ブラシ、針刺し事故、保育園などでの子ども同士の噛みつきや格闘技での感染の報告もあります。皮膚のほんのわずかな傷からでも感染するといわれています。
 HBVに感染すると、持続感染する場合と一過性感染で終わる場合があります。乳幼児期では、免疫機能が未熟なためウィルスを排除できずに、肝臓の細胞に入り込んで、持続感染(キャリアー)の状態になります。キャリアーになると初めは無症状ですが、年月を経て約10〜15%の人が慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと進展してしまいます。
 一方、幼児期を過ぎて免疫機能が発達した時に感染した場合は、ほとんどの人が一過性の感染で無症状に経過します。約30%では急性肝炎を起こして自然に治癒しますが、ごく一部では劇症肝炎を発症して亡くなることもあります。キャリアー化する場合はほとんどありません。
 従来は、一過性感染を起こして回復すると、治癒と考えていました。しかし最近になって、治癒した後に、他の病気で免疫抑制をおこす治療(免疫抑制剤、抗癌剤など)を受けた時に、ウィルスが再活性化して肝炎をおこすことがわかり、問題になっています。HBVは完全に排除されずに、ごくわずかですが、肝臓の中に残っていたのです。つまり、一過性感染とはいえ、いったんウィルスに感染すれば、完全な排除はできないということです。とても恐ろしいウィルスといえます。
 HBVはいくつかの遺伝子型タイプに分かれています。近年、今までの日本にはなかった遺伝子型を持つHBVが海外から入ってきています。このタイプのHBV感染は、性感染症として若者の間で増加しています。急性肝炎を起こした後に、一過性で治癒するのではなく、約20%の割合でキャリアー化してしまうのが特徴的です。今後の流行が大変心配されています。
 このように、HBVに感染する危険性は、母子感染だけではありません。いつ、誰にでも、また、成人してからも感染のリスクがあります。HBVに感染してしまうと、一生にわたって、わずらわされることになります。
 WHO(世界保健機関)は1992年から母親のHBVの感染には関係なく、すべての新生児にワクチン接種をするユニバーサルワクチネーションを勧めています。世界では180の国々(2011年現在)ですべての新生児にワクチンを接種しています(世界中の新生児の約75%)。残念ながら、日本では定期接種の対象者はいまだに母子の垂直感染予防のみです(2014年現在)。最近はHBV感染のリスクを親が理解するようになって、自費負担でも接種を受けるお子さんがとても多くなっています。一日も早い定期接種化が望まれます。
 HBVワクチンは合計3回受けます。出生後はいつからでも接種が可能なので、なるべく早い時期での接種をお勧めします。ほかのワクチンとの同時接種もできるので、かかりつけの小児科でぜひB型肝炎ワクチンの接種のスケジュールを相談してください。
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